国税庁は令和5年9月7日に、『「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」等の一部改正について』を公表しました。
令和5年度改正で見直された「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例」(以下、空き家譲渡特例)について、相続人数の判定に係る留意点や耐震工事の完了時期の見直しなど取扱いが示されています。
空き家対策が取り沙汰されることが多い昨今、改めて空き家譲渡特例の基本的な内容と改正点を確認し、対策の準備を始めましょう!
1、空き家譲渡特例の概要
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる制度です。
※相続した空き家を売却した場合の特例チェックシートR5(PDF/235KB)
こちらのチェックシートが大変有能で、フローチャート形式で順を追って確認が可能です。
最新は上記の令和4年分となります。
2、特例の対象となる「被相続人居住用家屋」および「その敷地等」
特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるものをいいます。
(1)昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
(2)区分所有建物登記がされている建物でないこと。
(3)相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
3、特例の適用を受けるための要件(一部抜粋)
(1)売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
(2)次のイまたはロの売却をしたこと。
イ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
ロ 相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
※被相続人居住用家屋やその敷地等には以下の要件があります。
・相続から譲渡までの間、居住や賃貸の用に供されたことがないこと。
・耐震基準を満たしていること。
(3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(4)売却代金が1億円以下であること。
(5)売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(6)同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
(7)親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
※国税庁HP No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
4、令和5年度改正の内容(一部抜粋)
改正は令和6年1月1日以降の譲渡に適用されます。
(1)相続人が3 人以上の場合の特別控除額の上限が一人当たり2,000万円 (改正前:3,000万円)に引き下げられました。
相続人数の判定については、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋とその敷地等を取得した相続人が3人以上である場合が対象となります。
(2)空き家譲渡特例と自己の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除を同一年に併用し、相続人が3 人以上で空き家渡特例の控除上限額が2,000万円となる場合、一定の調整計算を行った上で、 両特例を合わせた特別控除額の上限は3,000万円となります。
(3)被相続人居住用家屋の耐震基準の要件について、改正前は耐震工事を譲渡前に完了する必要がありましたが、譲渡日から翌年2 月15日までの間に耐震工事が完了した場合も対象に加えられました。
5、おわりに
空き家譲渡特例の基本的な内容と改正点をまとめました。
総務省の『平成30年 住宅・土地統計調査結果』によると、2018年10月1日時点の空き家は848万9,000戸、前回調査の2013年に比べ29万3,000戸増加しました。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も13.6%と過去最高となっており、空き家は今後も増加することが予想されます。
前述の通り空き家譲渡特例には細かな要件があるため、実際に相続した空き家の売却を検討されている場合は専門家への相談をオススメします!